J1第20節 川崎 vs FC東京 (等々力) そして、川崎は今後どのタイトルを狙うべきか。

両クラブとも上昇ムードで今回の多摩川クラシコを迎えた。


川崎は3日前のナビスコ杯準々決勝で、リーグ戦では苦杯をなめた首位鹿島を延長戦の末、撃破。チームとして大きな壁を乗り越えた。

一方のFC東京もここまで5位といよいよACL圏内が見えてきた。昨季に加入したカボレブルーノ・クアドロスを含め、ようやく選手の能力がチームに還元できるようになってきた。そして、先日も触れたばかりだが、石川が素晴らしい。今、機会があれば是非スタジアムで見てほしい選手がこの石川だ。

ここで相手を倒せば、今後の目標に向けて大きく前進できる一戦だ。


ライバル同士の一戦は攻撃的で前掛かりな試合になった。共に攻撃陣にタレントを揃える両チーム。相手陣深くまで攻め込んだと思ったら、カウンターで相手に一気に自陣ゴール前まで持ち込まれる。中盤の潰し合いはなく、ハンドボールのようにどちらかのシュートで展開が切れる試合だ。
前半は両サイドから厚く攻撃を仕掛けるFC東京が優勢。特に左SBの長友の運動量が素晴らしい。プレーのスタート時は当然、最終ラインにいるわけだけど、あっという間に相手陣の深くまで上がってくる。

東京の先制点は、その長友から。37分、左サイドを駆け上がった長友が上げたグラウンダーのクロスを石川が押し込み、先制。川崎のDFはそれまで東京の攻撃を最後の一線で防いでいたが、ついにやられた。


しばらくはFC東京のペース。53分、東京のサイドからの圧力に対応するために温存していたレナチーニョを投入。直後の53分、ようやく上がれるようになった右SBの森からの折り返しをジュニーニョが頭で合わせて、同点。ここから流れが川崎に傾き、チャンスが幾度となくあったが逆転弾が放てず。しかし引き分けを覚悟したロスタイムにペナルティエリア内の混乱から谷口が右足を振りぬいて、最後の最後で突き放した。

川崎は今後どのタイトルを狙うべきか。

来週はオールスターで休み。その前に苦手の鹿島をカップ戦で叩き、そしてライバルFC東京を下して、連戦を終えることができたのは非常に良かった。

川崎は現在、リーグ戦、ナビスコ杯、ACLと全てのコンペティションで勝ち残っているが、ここから数ヶ月は大会の重要性に優先順位をつけて、選手のコンディションと相談しながら戦うことになる。

一ファンの自分としては、JリーグACLナビスコ杯 の優先順位だと思っているが、まだタイトルを取ったことがない川崎にとっては、ナビスコ杯だって取れるものなら取っておきたいという気持ちも実はある。
しかし、3タイトル同時に狙えるほど、このクラブは器用ではないし、まだ力はないだろう。そもそもタイトルを一つ取ることだけでも凄い事だし、非常にエネルギーを必要とすることなのだ。それは一昨年の浦和、昨年のG大阪を見ればよくわかる。
クラブの規模から言えば、川崎がいくら可能性があるからといって、全てのタイトルに同じように力を入れるのは愚策なのだ。どれか一つに絞るのが賢明だと思う。


そう考えると、現時点で鹿島と勝ち点が8がついていながらもリーグ戦を最優先に置く僕の考えの理由を記さなければならないだろう。

実はこれも川崎のクラブ規模によるものだ。
川崎はこれまでフロントと選手の努力によって、予算の割にはJリーグでも常に上位に顔が出せるクラブになった。そして、等々力も10年前と比較すればビックリするくらい集客ができるようになった。


すごくよくやっているけれど、しかし試合でのサッカーの内容だけではなくて、財政規模や地域からのサポートを考えると、『アジアで戦う』『リーグで優勝する』ことをテーマにしたとき、川崎は、まだまだ足りてない。


とは言っても、急にメガクラブになれるような夢の話などない。川崎の予算が一気に増額するわけでもないだろう。等々力が改修されて一気に大きくなることもないだろう。


だから、地道に状況を改善させていくしかない。そう、川崎がこれまでにもそうやって来たように。まだまだプロビンチアに過ぎない川崎は、競争の中で短期的かつ総取りできる力はない。だから、まずは中期的な繁栄の道を選びたい。
その意味でも、リーグ戦で来季のACL出場権を獲得し続けることは、クラブの継続的な体質強化に繋がる。なので、まずはJリーグが第一優先。


残るACLナビスコを比較した場合、ここは正直その時のチームの状況と相手次第で重要度は変わる。ただし、ACLはベスト8まで勝ち残った。次の名古屋を撃破して準決勝まで行けるようならば、こちらを狙いたい。
アジア王者を目指せる機会など、そうは回ってこないのだから。

とは言ってみても、ナビスコ杯も狙ってほしいというファン心理も当然ある。2年前、決勝でガンバに負けた悔しさを晴らしたいという気持ちは今でもあるが、今年はリーグとACLに譲る。


長々と書いてしまったが、色々な意見があると思う。この数ヶ月そんな議論ができるのは、今年川崎サポーターだけができる贅沢だったりするわけで、今シーズン残りも大いに愉しみたい。