清宮克幸・春口廣対論 『指導力』
- 作者: 松瀬学
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/03/17
- メディア: 新書
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書店に行くと、新書が筍のように続々と発刊されているのがわかる。昔は、それこそ岩波のイメージぐらいしかなかったが、いまや大手出版社はもとより、ソフトバンクのような新参者までが参入。ポピュラーモノからニッチなマニアものまで多品種少生産のごとく、続々とタイトルを生み出している。
今日、書店で目にしたこの本の裏書をみると二刷だった。大学ラグビーという決して多くはない読者層(失礼!)を相手にしたものとしては、決して悪くない。
僕はラグビーを見るのは好きだ。でも、選手やチームのサイドストーリーを知っているほど大好きかといえばそうではなく、ライトなラグビー好き。だからファンと称しては、それこそラグビーファンに失礼だろう。
そんな僕でも、ワセダの清宮や今泉は知っている。昨年のワセダが最強だったことも知っている。最強ワセダのチームマネジメントを知りたい。そんな気持ちで購入。
しかし、この本はそんな生半可な内容のものではなく、早稲田(現・サントリー)の清宮克幸と関東学院の春口廣という二人の指導者が最強を目指して、異なるアプローチ、組織マネジメント、人生観をお互いに晒したものとなった。
僕ははっきり言ってラグビーの戦術どころか、ポジションの呼称ですら定かでないが、それを別にしても面白い。
ビジネスマンの清宮と教授の春口。人脈とステータスを下に好素材の高校生を迎え入れ、部員の卒業後も就職では一流企業への便宜を図れる名門の早稲田大学と、好素材は早慶明に取られてしまうので、無名の素材を一から育て上げることを身上とし、卒業後の就職の世話では早稲田の比ではない苦労を要する叩き上げの関東学院。
スタンスが異なるのだから、当然清宮と春口の指導者としてのチームの作り方は異なる。でも、二人に流れる人間観の幹、そして日本ラグビーへの思いは共通だ。
メンバーが毎年加わっては去っていく大学ラグビー界において、5年連続で大学選手権の決勝で両校が激突するのはどうしてなのか。組織マネジメント論として秀逸。部下を持ち、組織を束ねることに苦心している方ならば、共感することがこの本には、かなりある。
読後、ワセダとカントーのオープン戦、かなり観たくなった。