J1 第1節 川崎 vs 新潟 (等々力)

2010シーズンの開幕。川崎は等々力に新潟を迎えた。


川崎は高畠監督がヘッドコーチから昇格。仏・レンヌから稲本潤一横浜FMから小宮山尊信が完全移籍で加入。FC東京から佐原秀樹がレンタル移籍から復帰。同志社大楠神順平をはじめ3名をルーキーで獲得した。
しかし開幕前に中村憲剛ジュニーニョが怪我で離脱。大黒柱の2名を欠いたまま開幕を迎えた。


高畠監督はキャンプを通して4-3-3の布陣を試していたが、この日は稲本をアンカーに、谷口と田坂が前目に陣取りを逆三角形の中盤、FWは左からレナチーニョチョン・テセ、黒津の3トップを形成した。


新潟は波乱のシーズンオフだった。前任の鈴木淳氏が退任し、黒崎久志監督がヘッドコーチから昇格。昨年のレギュラークラスからGK北野が大宮へ、DFジウトンが鹿島へ、DF千代反田が名古屋へ、MF松下がFC東京と4名が退団した。そして、この日は司令塔のマルシオ・リシャルデスが怪我で欠場。韓国U-21の?永哲、J2から復帰した河原和寿と面白い若手はいるが、開幕戦は苦しい布陣となった。


不安を抱える新潟に対して、川崎がキックオフ直後からラッシュを掛ける。新潟からボールを奪った川崎は、ボールを受けたチョン・テセが、裏のスペースへ出すと黒津が走りこんでシュート。新潟のGK黒河がはじいたボールをレナチーニョが落ち着いてゴール右隅に決め、試合開始直後から川崎が先制。川崎のラインを上げて前からプレッシャーを掛ける守備がハマったこともあるが、新潟はこの開始直後の失点で前半を通して、チームがパニックに陥った。21分には中央でパスカットをした稲本が、彼らしいドリブルでの攻め上がりから対面の相手DFの虚をつく裏のスペースにボールを通し、走りこんだ黒津が追加点。


前半はこのまま川崎の2-0で終了。終始川崎のペースで進んだ前半だった。新潟は中盤でほとんどパスが回らない。マルシオ・リシャルデスの欠場以上に、これまで丁寧にボールをさばき自ら走ってパスコースを作っていた松下の不在を感じた。このままだと新潟はマズイことになるぞと、思っていたが、後半、まるでオセロがひっくり返ったかの如く、形成が逆転してしまう。


両チームのフォーメーションをマッチアップさせると、どうしても川崎の両サイドは薄くなる。最終ラインからのロングボールで矢野貴章をサイドに走らせ、また両サイドの?永哲、河原和寿を中心に積極的にアタックを掛けることで、川崎は防戦一方となった。川崎はラインを高く上げるのだが、相手にボールを取られてから、ラインを一度下げてもう一度守備網を構築するわけでもなく、それともラインを維持したまま、FWとMFがボールホルダーを挟んで奪い取るわけでもなく、高いラインのままプレスが掛からずに無防備な形で新潟のサイドアタックを受け続ける。また、セットプレーでも空中戦では新潟がことごとく競り勝った。これまで沈んでいた新潟サポが一気に息を吹き返す。


川崎は試合を落ち着かせられずに、苦しい形でカウンターを仕掛けても、逆にカウンターを喰らう場面が目立った。63分、川崎のカウンターを止めた新潟が逆にカウンターを仕掛け、右サイドのスペースを抜けた?永哲が川島との1対1を決め、1点を返した。


ここからはお互いに中盤が無力化したサッカーとなり、新潟に数多くの得点機が生まれるが、川島が好セーブを連発。川崎が2-1で何とか開幕戦を逃げ切った。


まだ開幕戦でシーズン序盤ということもあり、この試合だけで評価はできないが、川崎は4-3-3を今後も続けるためには修正箇所はたくさんあった。FWからDFまでの連動性、ラインコントロール、相手ボールでのプレッシャーの掛け方、そして稲本を含めた3センターのバランスのとり方などなど。これから改善されるべく高畠監督は修正してくるだろう。関塚前監督の病気療養中の代理監督時代にも同様に4−3−3を取り入れたが、やはり全体が間延びするなど問題点があったが、今回は同じ轍は踏まないでほしい。


対する新潟は、今後マルシオ・リシャルデスが戻ってどうなるか。今季は中位以下の相手に対して勝ち点を落とさないことが求められるが、今日の後半のようにボールをどんどん縦に入れてくるサッカーが続けられるようならば、残留争いに顔を出すことはない。矢野、大島を始め、高さとフィジカルに勝るプレイヤーが多いので、五分のボールでもペナルティエリア内に放り込めれば、結構チャンスは生まれると思う。


面白かったのは?永哲。右サイドにワイドに張ってボールを持つと、鋭角度でドリブルでゴール前まで一気に駆け上がってくる。石川直宏ともちょっと違うな。直線的にエッジの効いたドリブルを仕掛けてくるウインガーだ。最近の韓国の若手はいい素材が多くてうらやましい。


MOM 川崎GK 川島永嗣